「のびちゃん♪ 学校行かないと遅刻するわよ。それにしてもかわいい寝顔だ事♪」
ママはショックのせいでおかしくなってしまったのだろうか?
毎日毎日、朝から晩まで、のび太に話しかけている。
どれほど寝れない日が続いたのだろう、

今ではママはガリガリにやせ細ってしまった。
のび太の寝顔はまるで天使のようだ・・・・・。
パパも会社を辞め、毎日のび太のそばにいる。
ドラえもんはあれ以来、誰とも口を聞かなくなってしまった。
ちょうど小学校が終わる時間・・・・

「おばさ〜ん。のび太は?」
ジャイアンを筆頭に今日もクラスのみんながお見舞いにきた。
「あら剛くん。 今日はのびちゃんまだ起きないのよぉ、しょうがない子でしょ?のびちゃ〜ん、クラスのみんなが来たわよ。ほらっ起きなさい!」

「おばさん・・・起こさなくていいよ。まだ寝かせてあげてよ・・・まだ眠いんだよ、きっと・・・・」
「そお?ごめんなさいねぇ。せっかく遊びに来てくれたのに。」
「ドラえもんっ元気だせよっ」

「のび太は死んだ訳じぁないさ。」
「そうよ、私達の友達ののび太さんはここにいるじぁない。」
「・・・・・・・みん・・な・・・・・・・・・。」
ドラえもんが口を開いた。

堰を切ったように、いままで我慢してきた涙が一気にドラえもんの目からあふれる。
「みんな・・・・僕、のび太くん大好きだから、病院で寝たきりののび太くんをどこかに連れていってあげたいんだ・・・・」
「パパ・・・ママ・・・・・・・いいでしょ?僕はのび太くんの為に未来から来たんだ・・・・。」

「ドラえもん・・・・・。」

「ドラちゃん・・・・・。」

そういうと、ドラえもんは空っぽのはずの4次元ポケットから「どこでもドア」を取り出した。
ドラえもんは何かあった時の為に「どこでもドア」だけは売らずにとっておいたのである。
ドラえもんは「どこでもドア」を狭い病室の中に立てると、寝たきりののび太に話しかけた。
「のび太くん・・・・どこに行きたい?のび太くんの好きな所に一緒に行こう。僕達、いままでだってどこに行くにもず〜っと一緒だったもんね。」

ドラえもんはそう言うと、のび太を背中におんぶした。

「どっこいしょ。 重くなったねぇ のび太くん・・・・。」

のび太を背中に背負ったドラえもんは
「どこでもドアー」の前に立って、もう一度のび太に聞いた。どこに行きたい?ねぇのび太くん。」

答えが帰ってくるはずはなかった・・・・・。

しかし、一瞬みんなにはのび太が笑ったように見えた。
幻だったのかもしれない・・・・。

「わかったよ。のび太くん。 そこへ一緒に行こう・・・。」
ドラえもんには何か聞こえたのだろうか?
またのび太が微笑んだ。見間違いなどではない。
みんな見たのだ。

「のび太くん。じぁそろそろ行こうか・・・・。」
「どこでもドアー」が一人でに開いた・・・・

開いたドアの向こうに素晴らしい景色が広がった・・・・。
綺麗なチョウチョが飛んでいた。
見たこともないほど可憐で、嗅いだ事のないほどいい匂いの花が咲いていた。
まぶしい程の光でいっぱいだった。
のび太が最後に行きたい所。
そこは天国だった。

「さあ 行こう。」

ドラえもんは動かないのび太くんを背負ってその中に入っていった。



・・・ギィー バタンッ・・・・・・・・

--完

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